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食事

「よく噛む」を見直す——早食いをゆるめる小さな工夫

「よく噛む」を見直す——早食いをゆるめる小さな工夫
イラスト:サエコさん(冴える習慣ラボ)

食事のとき、ひと口を何回噛んでいるか、数えたことはあるでしょうか。ほとんどの方は数えたことがないと思います。私もそうでした。ところが公的な調査を眺めてみると、「ゆっくりよく噛んで食べる」は、国が目標値まで置いて追いかけている項目でした。今回は、噛むことをめぐる数字と、早食いをゆるめるための小さな工夫を整理してみます。

「ゆっくりよく噛んで食べる」人は、半分に届かない

農林水産省の資料「我が国の食生活の現状と食育の推進について」(令和8年7月)に、こんな数字があります。

  • ゆっくりよく噛んで食べる国民の割合…46.2%(令和7年度)
  • 目標値…55%以上(令和12年度)

半分に少し届きません。そしてこの項目は、令和8年6月24日に決定された第5次食育推進基本計画にも、引き続き目標として置かれています。

国が5年計画の中にわざわざ書き込むということは、裏を返せば「放っておくと勝手には増えない」ということでもあります。忙しさや習慣の問題なので、当然かもしれません。

なお、国の「食生活指針」の第1項も、次の一文から始まります。

おいしい食事を、味わいながらゆっくりよく噛んで食べましょう。

早食いと体格の関係を調べた調査

では、噛む速さは何と関係しているのでしょうか。厚生労働省のe-ヘルスネットに、国立保健医療科学院の安藤雄一氏による解説「速食いと肥満の関係」が掲載されています。紹介されているのは次の2つの調査です。

愛知県での調査 35〜69歳の成人4,742人(男性3,737人、女性1,005人)を対象に、食べる速さと体格の関係を調べたもの。速食いの人は現在のBMIが高い傾向にあり、20歳時点からのBMIの増加量も大きい傾向が示されました。

大阪府・秋田県での調査 成人3,287人(平均年齢53.4歳)が対象。「速食い」の習慣がある人、「お腹いっぱい食べる」習慣がある人はそれぞれBMIが高く、両方の習慣を持つ人はさらに高い、という結果でした。

読み方には少しだけ慎重に

数字はきれいに並んでいますが、これらはある時点での関連を示した調査です。「早食いだから体格が変わった」のか、「たくさん食べる人がもともと早く食べる傾向にある」のか、この形の調査だけでは切り分けられません。

ですので、「噛む回数を増やせば体重がこうなる」という読み方はできません。早く食べる習慣と体格には関連が報告されている——受け取り方としては、そのくらいが正確なところだと思います。

農林水産省の食育のページでは、よく噛んで食べると満腹感が得られやすくなる、と説明されています。満腹の合図が届く前に食べ終えてしまわない、という理屈です。

「噛ミング30」という目安がある

噛む回数の目安として、国が示しているものがあります。噛ミング30(カミングサンマル)です。ひと口あたり30回以上噛むことを目標に掲げた取り組みで、8020運動とあわせて食育の中で推進されてきました。

とはいえ、毎食すべてを数えるのは現実的ではありません。実際に一度だけ数えてみると分かりますが、やわらかいものは10回前後で飲み込めてしまいます。30回は、「思っているより噛んでいない」と気づくための物差しと考えるほうが、続けやすいように思います。

数えるのは、最初のひと口だけで十分です。

噛める歯があってこそ、の話

噛む回数の前に、噛める状態かどうかという問題があります。ここには明るい数字が出ています。

厚生労働省の令和6年歯科疾患実態調査(令和6年10〜11月実施)によれば、80歳で自分の歯を20本以上保っている人の割合、いわゆる**8020達成者は61.5%でした。令和4年の調査では51.6%でしたから、約10ポイント増えたことになります。過去1年間に歯科検診を受けた人の割合も63.8%**で、初めて6割を超えました。

一方で、先ほどのe-ヘルスネットの解説には、噛むことに問題があるとミネラル・ビタミン・食物繊維などの摂取量が低くなる傾向が指摘されています。噛みにくい食材が食卓から静かに減っていく、ということのようです。

歯や入れ歯の具合で噛みにくさを感じているときは、回数を増やすより先に、歯科で相談するほうが早道です。噛む工夫は、そのあとの話になります。

早食いをゆるめる、小さな工夫

意志の力で「ゆっくり食べよう」と思っても、なかなか続きません。仕組みのほうを変えるほうが確実です。

  • 最初のひと口だけ数える:食事の1口目を30回。それだけで、その日のペースが少し変わります
  • ひと口ごとに箸を置く:手に持ったままだと、飲み込む前に次を運んでしまいます
  • 噛みごたえのある食材を1品足す:農林水産省は、玄米飯、根菜類、たこなどを例に挙げています。ごぼう、れんこん、きのこ、切り干し大根なども同じ役割をします
  • 食材を大きめに切る:細かく切るほど噛む回数は減ります。乱切りにするだけで変わります
  • 汁物で流し込まない:飲み物や汁物は、口の中が空になってから
  • ながら食べをやめる:テレビやスマホを見ていると、噛む回数は自分でも把握できなくなります
  • 食事の時間をあらかじめ決めておく:「20分かける」と決めるほうが、「ゆっくり」より具体的です

魚を食卓に増やす工夫については青魚を食べる習慣、続けるコツ——手間をかけない取り入れ方にまとめています。噛む回数を増やす食材選びと、重なる部分があります。

まとめ

  • ゆっくりよく噛んで食べる人は46.2%(令和7年度)。国の目標は55%以上(令和12年度)
  • 早食いの習慣と体格には関連が報告されていますが、因果を示すものではありません
  • 「噛ミング30」はひと口30回が目安。全部数える必要はなく、1口目だけで十分です
  • 8020達成者は61.5%(令和6年)と増加。噛みにくさがあるときは、まず歯科へ
  • 続けるコツは意志より仕組み。箸を置く、大きめに切る、汁物で流し込まない

噛む回数は、増やしたところで誰にも気づかれません。それでも、1口目を数えるだけなら、今日の夕食から始められます。数えてみると、いまの自分のペースが分かります。

参考にした情報


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