デュアルタスクとは?歩きながら頭を使う習慣の始め方
「あれ、何をしに来たんだっけ」。台所に立った瞬間、目的を忘れてしまう。そんな経験を口にされる方は少なくありません。年齢を重ねれば、こうした「うっかり」は自然に増えていきます。
今回は、体を動かしながら頭も使う「デュアルタスク」という考え方をご紹介します。特別な道具は要りません。いつもの散歩に、ひと工夫を足すだけです。
デュアルタスクとは、二つのことを同時に行うこと
デュアルタスクは、日本語で「二重課題」と呼ばれます。二つの作業を同時に行うことを指す言葉です。
たとえば、歩きながら人と話す。料理をしながら次の段取りを考える。どれも日常にありふれた場面です。
ここで注目したいのは、慣れた動作をひとりで黙々と続けているとき、頭はあまり使われていない、という点です。同じ30分の散歩でも、黙って歩くのと、しりとりをしながら歩くのとでは、中身がずいぶん違います。
「ながら」は普段あまり良い意味で使われませんが、歩く・体を動かすことと、考えることを意図的に重ねるのがデュアルタスクの考え方です。
公的機関でも紹介されている「コグニサイズ」
この考え方を運動プログラムの形にまとめたものに、国立長寿医療研究センターが開発した「コグニサイズ」があります。英語の cognition と exercise を組み合わせた造語で、運動と、計算やしりとりなどの課題を組み合わせた取り組みの総称とされています。
健康長寿ネットの解説では、実施の条件として次の2点が挙げられています。
- 全身を使った**中強度程度の負荷(軽く息がはずむ程度)**がかかり、脈拍数が上昇すること
- 同時に行う課題によって、運動の方法や課題自体をたまに間違えてしまう程度の負荷がかかっていること
興味深いのは2つ目です。「間違えるくらいでちょうどよい」とされている点は、意外に思われるかもしれません。すらすらできてしまうなら、それは慣れてしまった証拠です。うまくいかずに笑ってしまうくらいが目安だと考えると、気持ちがずいぶん楽になります。
紹介されている具体例には、次のようなものがあります。
- コグニステップ:ステップを繰り返し、3の倍数のときに拍手する
- コグニウォーク:大股で歩きながら、しりとりや計算を行う
- グループで行う方法:複数人で番号を数えたり、しりとりをしながら体を動かす
今日からできる3つの始め方
1. 散歩でしりとり
ご夫婦やお友達と歩くなら、しりとりがいちばん手軽です。ひとりで歩くときは、「あ」から順に食べ物の名前を思い浮かべる、都道府県名を北から順に挙げてみる、といった方法もあります。
2. 室内で足踏みしながら数える
雨の日や暑い日は、無理に外へ出る必要はありません。その場で足踏みをしながら、100から3ずつ引いていきます。100、97、94、91……。途中で分からなくなったら、そこから数え直せば十分です。
3. 帰り道に買ったものを思い出す
買い物からの帰り道、今日かごに入れたものを頭の中で挙げていく方法もあります。レシートを見るのは、家に着いてからにしておきます。
続けるための小さな工夫
新しい習慣は、増やすより「足す」ほうが続きます。
- 時間を新たに作らない:いつもの散歩や家事に重ねるだけにする
- できた日に印をつける:カレンダーに丸を書くだけでも記録になります
- 誰かと一緒に行う:会話そのものが2つ目の課題になります
- 難しすぎたらすぐ変える:3ずつ引くのがつらければ、2ずつでも構いません
安全に、無理のない範囲で
歩く量の目安として、厚生労働省の「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」では、高齢者について「歩行又はそれと同等以上の(3メッツ以上の強度の)身体活動を1日40分以上」「有酸素運動・筋力トレーニング・バランス運動・柔軟運動など多要素な運動を週3日以上」が推奨事項として示されています。ただし、これはあくまで目安で、個人差を考慮することとされています。
そのうえで、次の点にはご注意ください。
- 交通量の多い道では課題を行わない。足元と周囲への注意が最優先です
- 段差や滑りやすい場所、暗い時間帯は避ける
- 膝や腰に痛みがあるとき、持病や服薬があるときは、始める前にかかりつけの医師にご相談ください
「安全に歩けること」が土台にあってこその工夫です。頭の課題に気を取られて足元がおろそかになるようなら、その場では課題をやめてしまってかまいません。
まとめ
- デュアルタスク(二重課題)は、体を動かしながら頭も使うこと
- 公的機関が紹介する取り組みでは、「軽く息がはずむ程度」「たまに間違える程度」が目安とされています
- 散歩でしりとり、足踏みしながら数える、帰り道に買い物を思い出す——始め方はどれも小さなことです
- 交通量の多い道では行わない、体調に不安があるときは医師に相談する。この2つは忘れずに
いつもの散歩に、ひと言足してみる。今日はそれだけで十分だと思います。
私が続けている習慣のひとつ
散歩のほかに、私が毎朝続けているものに、ホタテ由来のプラズマローゲンを含むサプリメントがあります。食事だけで整えにくい部分の補いとして、コーヒーを淹れるついでに飲む、と決めています。
サプリメントは医薬品ではありません。体調に不安がある方は医師にご相談ください。
参考にした情報
- 健康長寿ネット(公益財団法人 長寿科学振興財団)「コグニサイズ」 https://www.tyojyu.or.jp/net/byouki/ninchishou/cognicise.html
- 国立長寿医療研究センター「コグニサイズとは?」 https://www.ncgg.go.jp/ri/lab/cgss/department/gerontology/cognicise.html
- 厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023(概要)」 https://www.mhlw.go.jp/content/001204942.pdf